ポケットにキミの手を


「え? 達雄さん?」


対する司さんは素っ頓狂な声を上げた。

知り合いなのかしら。
まあ、司さんは営業さんだし、人脈も豊富そうだけど。


彼は目を細めて司さんの隣に座る。


「久しぶりだな」

「どうしてこんなところに。……え?」

「仕事だよ。そっちの会社に昼から行くところ」


昼から仕事ってもしかして……。


「あの、もしかして、コピー機の件で?」


おずおずと会話に加わる。


「ええ。もしかして、人事総務部の塚本さん?」

「はい、そうです。あの」

「西崎といいます。よろしくお願いします」


ペコリとさげ、注文を取りに来た美亜さんにパスタのランチを頼む。


「まだメンテナンスの時期じゃないでしょう」


司さんはなぜか不機嫌そうだ。
突っかかるように言うので、「調子が悪いので点検をお願いしたんです」と私が告げると渋々黙りこむ。


「……司くん、元気?」


西崎さんは私と彼を交互に見つめて言った。


「元気ですよ。そっちこそお元気そうで」


司さんの返事はそっけない。

知り合いの割には愛想がないような気もするし。
一体どうなっちゃってるの?


「もしかして彼女?」


西崎さんは、困ったように私の方に顔を向けた。
教えていいものか迷って司さんを見つめたら、困ったように視線をずらされてしまった。

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