ポケットにキミの手を
誰かに自分を受け入れてもらえた時、心はどうしてこんなにホッとするんだろう。
私の言葉を、司さんは否定しない。
必ず一度は受け止めてくれる。
私もそうでありたいの。
あなたの感情、それがどんなものでも、受け入れて一緒に考えていきたい。
「……結局達雄さんに感謝することになるから皮肉だ」
「え?」
「なんでもない。行こう、菫」
伝票を手に取り店を出るまでの間も、私の腕を掴んで引っ張っていく。
お店を出てからは、手を繋がれる。まだ暑いこの季節、触れ合う手は直ぐに汗が滲んでくるけれど、彼はしっかり掴んで離そうとしない。
甘えてくれてるのかなと思ったらとてもうれしくて。
私も少しだけ西崎さんに感謝する。
「たまには、甘えてもらえるの嬉しいです」
そう言ったら、司さんは嬉しそうに微笑んだ。