ポケットにキミの手を

「消毒」

「……え?」


とっさに、彼女の指先を口に含み、舌先で赤くなった部分をなぞる。
彼女はビクリと体を揺らし、真っ赤な顔で俺を見つめた。


「つ、司、さん? あ、あの。火傷は冷やすのでは……」

「あ、ごめん。つい」


とか言いつつ、手を離す気はない。そのまま指先をしっかり味わって、彼女の困り顔を堪能する。


「やぁ、もう」


菫が俺の視線から逃れるようにギュッと目をつぶる。
そろそろ潮時かな。やりすぎて嫌われても困る。


「それよりいい匂いだね」


言いながら中へ入って行くと、菫も気を取り直してついてきた。


「ごめんなさい、ちょっと焦げてしまったんですけど」

「問題ないよ。でも珍しいね」


上着を脱いでハンガーにかけようとした時、クローゼットに指輪のケースが開かれた状態で置かれているのに気がついた。


「あれ、これ」

「あ、それは」


菫は慌てて隠そうとするけど、中身はそこには無い。


「中身どうした? ついに捨てた?」


軽い気持ちでそう聞くと、菫は首を横に振りながらおずおずとポケットを探る。


「ちょ、ちょっとつけて見てただけです」

「つけてたの?」


じゃあなんで今は外してるんだ?
わからないことだらけで首をひねると、菫はますます顔を赤くする。

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