りんどう珈琲丸
今日もりんどう珈琲はとっても暇で、わたしは窓の外を見てる。マスターはカウンターで本を読んでいる。水曜日の静かな午後。今日も曽我部恵一が歌っている。魔法のバスに乗って、どこか遠くまで行こうって。わたしはだんだんこの人の歌声が好きになっている。彼が歌を歌う理由みたいなものが、歌から伝わってくる。そんな歌だ。このあいだは、彼がサニーデイ・サービスってバンドをしていた頃の「東京」っていうアルバムをアマゾンで買った。1996年のアルバムだった。わたしが生まれた年だ。お店の大きな窓の外の路地は人通りがほとんどない。12月の太陽の光はとっても澄んで、澱みがなくて、お店の中に入ってくる光がいつもより静謐な空気を運んでくるようだ。眠そうな野良猫が、路地のブロック塀の上で昼寝をしている。世界の時計の針がゆっくり進んでいるような、なにもない午後。
美篶さんにアドレスを聞いてから、わたしはなんども彼女にメールをしようと思った。それでもわたしはなんてメールを書いていいのかわからなかった。12月はいつもの倍くらいの早さで過ぎていった。もうすぐクリスマスがやってくる。
「マスター、もうすぐクリスマスだね」
「そうだな」
「クリスマスもお店は開けるの?」
「ああ。ひいは休むか」
「ううん。来てもいい?」
「もちろん。好きにしろよ」
アルバイトの帰り道、わたしは自転車を国道沿いに止めて、夜の海を見る。満月から少しだけ欠けた大きな月が海を照らして、海に光の道を作っている。わたしは心を決めて携帯電話を取り出す。そしてゆっくり美篶さんにメールを打つ。このまま今年が終わってしまうのは、なんだか怖かった。どうしても美篶さんにもう一度会いたかった。思い切って送信ボタンを押す。夜の海を越えて、わたしのメールが美篶さんの携帯に届く。わたしは送信したメールを何度も読み返して、そのメールに受け取ったときに嫌なところがないか確認してしまう。わたしの心臓の音が少しだけ早くなっている。波が夜の海原にできた月の道を左右に歪ませている。
美篶さんにアドレスを聞いてから、わたしはなんども彼女にメールをしようと思った。それでもわたしはなんてメールを書いていいのかわからなかった。12月はいつもの倍くらいの早さで過ぎていった。もうすぐクリスマスがやってくる。
「マスター、もうすぐクリスマスだね」
「そうだな」
「クリスマスもお店は開けるの?」
「ああ。ひいは休むか」
「ううん。来てもいい?」
「もちろん。好きにしろよ」
アルバイトの帰り道、わたしは自転車を国道沿いに止めて、夜の海を見る。満月から少しだけ欠けた大きな月が海を照らして、海に光の道を作っている。わたしは心を決めて携帯電話を取り出す。そしてゆっくり美篶さんにメールを打つ。このまま今年が終わってしまうのは、なんだか怖かった。どうしても美篶さんにもう一度会いたかった。思い切って送信ボタンを押す。夜の海を越えて、わたしのメールが美篶さんの携帯に届く。わたしは送信したメールを何度も読み返して、そのメールに受け取ったときに嫌なところがないか確認してしまう。わたしの心臓の音が少しだけ早くなっている。波が夜の海原にできた月の道を左右に歪ませている。