りんどう珈琲丸
その週の日曜日、わたしは美篶さんに会いに東京に向かっていた。わたしのメールにすぐに返信をくれた美篶さんは、用事があって竹岡には行けないけれど、日曜日の昼間なら時間が取れるとメールをくれたのだ。木更津駅で降りて高速バスに乗り換えて、東京駅までは1時間くらい。東京駅の八重洲口で高速バスを降りると、美篶さんはバス停でわたしを待っていてくれた。
「柊ちゃん」
美篶さんはわたしに笑顔で手を振ってくれる。この間と同じジーンズに、黒のダウン。それだけなのにとってもおしゃれだ。わたしはこんなきれいな人と待ち合わせている自分が、なんだか少しだけ誇らしくなる。
「美篶さん。こんにちは」
「柊ちゃん、ようこそ」
「美篶さんすみません。お休みなのに」
「ううん。いいのよ。メールくれて嬉しかったわ」
東京の町の中で会う美篶さんは、なんだか竹岡の駅の待合室に座っている彼女とは別の輝き方をしているように思えた。うまく言葉にできないけれど、あの日の彼女はもっと静かに美しくて、今日の彼女はもう少しだけ明るい美しさを纏っているような感じがする。でもきっとそれは当然なんだと思う。ここは美篶さんにとっての日常で、わたしにとっての非日常。竹岡の駅はわたしにとっての日常で、美篶さんにとっては非日常なんだもの。
「柊ちゃん、お昼食べた?」
「いいえ、まだです」
「なにが食べたい?」
「美篶さんの好きな場所に行きたいです」
「そう。じゃあ今日は任せてね」
「はい」
美篶さんが連れて行ってくれたこぢんまりとしたイタリアンのお店で、わたしたちはお昼を食べながら向かい合っていた。美篶さんは改めて見ると本当に美しい人だった。美篶さんよりかわいかったり、きれいな人はきっとたくさんいると思うけど、なんだか美篶さんは佇まいが美しいのだと思った。
「柊ちゃん、今日はアルバイトお休みなの?」
「はい。今日は休みです」
「あのお店には、柊ちゃんのほかにもアルバイトさんがいるのかしら?」
「いいえ、わたしだけです。わたしがお休みのときは、マスターはひとりでお店にいます」
「そう。アルバイトは楽しい?」
「はい。喫茶店にはたくさんの人がやって来て、たくさんの人が通り過ぎていきます。わたしはそういうのを見るのが、なんだか好きみたいです」
「胡桃沢さんは、マスターは優しいでしょう」
「柊ちゃん」
美篶さんはわたしに笑顔で手を振ってくれる。この間と同じジーンズに、黒のダウン。それだけなのにとってもおしゃれだ。わたしはこんなきれいな人と待ち合わせている自分が、なんだか少しだけ誇らしくなる。
「美篶さん。こんにちは」
「柊ちゃん、ようこそ」
「美篶さんすみません。お休みなのに」
「ううん。いいのよ。メールくれて嬉しかったわ」
東京の町の中で会う美篶さんは、なんだか竹岡の駅の待合室に座っている彼女とは別の輝き方をしているように思えた。うまく言葉にできないけれど、あの日の彼女はもっと静かに美しくて、今日の彼女はもう少しだけ明るい美しさを纏っているような感じがする。でもきっとそれは当然なんだと思う。ここは美篶さんにとっての日常で、わたしにとっての非日常。竹岡の駅はわたしにとっての日常で、美篶さんにとっては非日常なんだもの。
「柊ちゃん、お昼食べた?」
「いいえ、まだです」
「なにが食べたい?」
「美篶さんの好きな場所に行きたいです」
「そう。じゃあ今日は任せてね」
「はい」
美篶さんが連れて行ってくれたこぢんまりとしたイタリアンのお店で、わたしたちはお昼を食べながら向かい合っていた。美篶さんは改めて見ると本当に美しい人だった。美篶さんよりかわいかったり、きれいな人はきっとたくさんいると思うけど、なんだか美篶さんは佇まいが美しいのだと思った。
「柊ちゃん、今日はアルバイトお休みなの?」
「はい。今日は休みです」
「あのお店には、柊ちゃんのほかにもアルバイトさんがいるのかしら?」
「いいえ、わたしだけです。わたしがお休みのときは、マスターはひとりでお店にいます」
「そう。アルバイトは楽しい?」
「はい。喫茶店にはたくさんの人がやって来て、たくさんの人が通り過ぎていきます。わたしはそういうのを見るのが、なんだか好きみたいです」
「胡桃沢さんは、マスターは優しいでしょう」