天使の贈り物
「お前らも、来月……待ってるぞ。
まだ何もないが、見ていけ」
マスターに促されるままに、
まだ内装が終わったばかりの、
真新しい会場内を見学する。
ステージの上に立って、
客席を見ると……
なんか、へんな感じで
慣れないポジションに戸惑った。
だけど……ここにいる、
皆は……この場所に立ってたんだ。
そんな頃、
会場備え付けのアンプやドラムが
到着して運び込まれてくる。
そのまま逃げられるはずもなく、
マスターに捕まった
煌太さんたちメンバーは
マスターに言われるがままに
手伝わされる。
各ステージの軽い
セッティングを終えた頃には、
すでにお昼を回り……
昼ご飯は、マスターが取ってくれた
出前を堪能した。
お昼を食べた後、
ようやく辿りついたのは、
晴貴さんのお墓。
去年の二人だけとは違って、
気持ちも少し軽くなって
穏やかに手を合わせられる時間。
そのまま、晴貴さんの実家へ。
実家の仏壇にも手を合わせて、
皆がその場所で、御呼ばれしている間に
私は断りを貰って抜け出した。
私も帰りたいから……。
晴貴さんの実家を出ようとした時、
後ろから、
そーすけさんが私の肩をトントンと叩いた。
「彩巴、俺も行くよ」
「うん」
小さく頷いて、
ゆっくりと実家のあった場所に
歩いていく私の手を、
背後からがっしりと繋いで
そのまま自分のポケットへと誘導した。