天使の贈り物 



そーすけさんのポケットの中には、
私の右手と、そーすけさんの左手。


繋がれた手だけは、
とっても温かかった。




去年よりも、もっと綺麗に整地されて
仮設住宅の合間から、
新しく建て直された家が立ち並ぶ。



我が家があったその場所は、
綺麗な更地となり、
誰かが小さな花束を置いてくれてた。




その場所にゆっくりと座り込む。



去年と少し心が違うのは、
2回目だからなのかな?






「彩巴ちゃん。
 彩巴ちゃんだね」




静かに祈る私に、
後ろから声がかけられる。


慌てて振り返ると、
そこには隣の家のおばちゃんが
近づいてきてた。




「ご無沙汰しています」

「元気にしてたかい?
 そうやって……元気そうな
 彩巴ちゃんの姿が見れて良かったよ」

「あの時は……父と母を
 探し出してくれて有難うございます」



そう言った後、
静かな沈黙が流れていく。



「あっ、ごめんなさい。
 ただ……一言、伝えたかったんで。
 おばさんたちは?」

「今はあそこの仮設住宅で生活してるよ。
 早く自分の家で生活したいね。
 それより、隣の人は?」


おばさんの視線は、
そーすけさんへ。


「桐生です」

そう言うと、
そーすけさんは
隣のおばさんに、
ペコリとお辞儀をした。 


「そう……。
 元気にやってるみたいで、
 おばさんも安心したよ。

 幸せにね。

 桐生さん、彩巴ちゃんを頼むよ」



そう言ったおばさんに、
そーすけさんは、静かにお辞儀した。



嵐が去ったかのように訪れた沈黙。

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