天使の贈り物
明け方。
震災の時刻が近づく頃、
マスターが、
アロマキャンドルに蝋燭の灯りを持って
ステージに登場する。
地下のメインステージの模様は、
2階・3階の開場に設置されている
モニターへと映し出されるらしい。
バンドメンバーによって、
来客一人一人に手渡されたキャンドルに、
灯りが灯されると、
暗闇の中に、
暖かな炎がゆっくりと揺らめいた。
「このLIVEハウスも、
あの震災の日、半壊し……俺の家族も
奪われました。
今日、ここに集まった人たちの中にも
大切な人を失ったり、仲間を失ったり
さまざまな悲しみをこえて、
集まってると思います。
今、バンドメンバーによって
会場にお集りの一人一人に灯される炎は
命の灯。
どうぞ、大切な人を思い描いて
その大切な贈り物を受け取ってください。
そして……その人が悲しまないように、
ゆっくりと歩いていってください。
傷つき、闇に隠れた心では
天使の贈り物に気が付くには、
時間がかかるるでしょう。
だけど……、今日、この灯を受けて
その贈り物の尊さをゆっくりと感じてください。
NAKED BLUE」
地下ステージに呼び出される
私たち。
「彼らもデビューを目前に
ボーカルの晴貴が旅立ちました。
残されたメンバー、思いを受け継いだ仲間たちが
今日、この日の為に来てくれました。
dreams聴いてください」
次々と、灯りが受け繋がれていく
キャンドルライトの道は2階ろ・3階へと
受け継がれているのだろう。
そんな灯りに見守られながら、
演奏が始まると……、
成実と共に、その歌を歌って行く。
その途中……楽器隊は、
音をフィールドアウトさせていく。