天使の贈り物 




「時間になりました。
 
 震災の犠牲のご冥福を祈って……。
 黙祷」




マスターの言葉に、
シーンと静まり返る会場内。




約1分間の黙祷を捧げた後、
メインフレーズを、
成実がアカペラで歌い上げる。


それを受けて、徐々に楽器隊が
演奏を繋げ、私も歌い始めて暫くすると
他のバンドメンバーや、
会場内のお客さんたちも
その歌を歌い始めた。







想いを受け継ぐ、
何処までも優しいキャンドルライトは、
暗闇の中、ゆらめきながら
周囲を照らしだしていた。







そして……その数日後。





美空さんが
旅立ったその時間。





私は、そーすけさんと二人
キャンドルに灯りをともして
ゆっくりと、
蝋燭の炎を受け渡した。





美空さんの想いも全て
受け継いで、
新しく歩き出すための
私だけのケジメのやり方。





美空さんが……
そーすけさんに逢わせてくれた。





そう思うための、
大切な儀式。







空に向かって、
ゆらゆらとたちのぼる、
蝋燭のともしびは
優しい光を広げていた。



< 109 / 178 >

この作品をシェア

pagetop