天使の贈り物
*
なぁ、お前は今……
どうしてるんだよ?
寂しくないか?
*
勾玉を握りしめながら、
静かに目を閉じて、問いかける。
美空の声は届かない。
アイツを求めれば求めるほど、
アイツの声は届かなくなる。
「おっ、奏介。
今、診察終わり?」
病院内で声をかけて来たのは
白衣姿の翔琉。
「あぁ、会計済ませて薬貰って帰るよ」
「そっか。
無理すんなよ」
「あぁ」
何気ない会話を交わして、
アイツは仕事へと戻っていく。
電光掲示板に、自分の会計番号が表示されると
そのまま診察券をスキャンして会計を支払う。
そのまま処方箋を受け取って、
病院を後にした。
駐車場に停めてある
愛車のRX-7へと乗り込むと
キーをまわしてエンジンをかけた。
助手席が空席になって
半年が過ぎたんだな。
そのまま車を走らせて、
病院を後にすると、あてどなく車を走らせる。
晴貴とシェアして借りた自宅に帰ると、
晴貴が居なくなった現実を思い知らされる。
かといって、そのマンションを解約して
離れることも、成実の為にやりたくなかった。
成実の居場所を、
守ってやりたいから?
そうしていることで
自分が許されるような気がしたから?
ただ……一つだけ言えるのは、
俺自身が安らげる居場所なんて
あの日から見つけられないままでいること。
それだけが確かな真実だった。