天使の贈り物 



ほんの少しずつ、
そーすけさんに寄り添おうとしていく心は
私にはどうすることも出来ず、
ただ流されるように、
彼の申し出に応じた。





せっかく到着した大学。

講義を受けるも、
意識はデートって言うか……
15時からの、そーすけさんとの待ち合わせで
頭の中はいっぱいで。


右から左に流れていくなか、
講義は終了の時間を告げる。


もう一限、講義が入っている成実と別れて
私はそのまま、はやる胸を抱きしめて
待ち合わせの場所へと向かった。



北口の前。


そーすけさんは、
すでに飲み物を片手に、
黙って立ってた。



そーすけさんを見つけた人たちは
びっくりしたように、
何かを話しかけるものの、
そーすけさんは少し言葉を交わすと、
話しかけた人たちは、
すぐにそーすけさんの前から立ち去った。




……やっぱり……。




遠くから見る、
そ-すけさんの表情は
凄く寂しそうで……
泣いているように見えた。






そのまま行くのも、申し訳ない気がして、
わざと携帯電話を取り出すと、
そーすけさんの電話番号を呼びだして発信する。



目の前の、そうすけさんは
ポケットから即座に出すと、
電話越しに声が聞こえた。




「もしもし、彩巴です。
 遅くなってすいません。
今、北口に到着したんですけど
 どちらにいらっしゃいますか?」



わざとキョロキョロと見渡すように
体を動かすと、
電話越しにそーすけさんが
私を見つけたらしい声が聞こえた。




「こんにちは。
 彩巴ちゃん」




耳元でその声が聞こえて、
やがて、そーすけさんが私の隣に到着したのを確認して
お互いの携帯電話を切った。




「こんにちは、そーすけさん。
今日はお誘い有難うございます」

「こちらこそ。
 彩巴ちゃんが来てくれて嬉しいよ。
 何処から行こうか?」

「ちょっと喉乾いちゃいました」

「なら少し車で移動してもいい?
 行きつけのカフェがあるから」



促されるまま、
頷く私の周辺には、
やっぱり、そーすけさんをチラチラと横見する
通りすがりの人たち。

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