天使の贈り物 




車を流し続けて、
疲れた俺は近所のショッピングセンターの
駐車場へと車を預けた。


ふいに携帯が着信を告げる。




液晶に映し出されるのは、
成実の名前。







晴貴の彼女の名前を無言で見つめて
覚悟を決めたように
通話ボタンを押す。




「もしもし」

「あぁ、居た。
 ちょっと、奏介アンタ今何処に居るの?」

「買い物」

「買い物って、私も行きたかった。
 それより、今日時間あったら顔貸してよ。

 大学で知り合った友達がさ、
 ちょっと気になるんだよね。

 んで、良かったら彩巴って言うんだけど
 その子のバイト先近くの、
 居酒屋まで付き合ってほしいなーって」




そう言って
電話越しに要求を伝える成実。





もし晴貴が生きていたら、
成実は間違いなく、晴貴にその役を頼んだだろう。



だけどアイツは今、出来るはずがなくて。

晴貴を助けられなかったのは、
俺にも原因があるはずで……。



出来たはずのことが出来なかった
後悔が、俺を罪の意識で縛り上げていく。




震えだす指先を必死に抑えこもうと
念じながら、その時間をやり過ごす。




「あぁ、付き合うよ」




断れるはずのない言葉を告げて
俺は、成実に気付かれないように
言葉を続けた。



「今、何処?」

「桜通りの駅前」

「了解。

 15分くらい時間つぶしてて。
 迎えに行くよ」



それだけ伝えると、
電話を切って、
慌てて震える指先を逆側の手で抑え込む。




何度も指を開いたり、閉じたりと力を加えながら
その震えがおさまるのを待って
俺は相棒を、成実の待つ場所へと走らせ始めた。


 
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