天使の贈り物 




晴貴が生きてれば……。

デビューが決まって、
勘当同然だった自宅に、ケジメつけに帰るって
帰っていった実家。


あの日、俺がアイツを送り出さなければ
アイツかこんな目に
合うことはなかったかもしれない。



道路が寸断され、その場所に立ち入るのが
時間がかかりすぎた。


歩き続けて、船を乗り継いで
ようやく辿りついたその場所。


晴貴の姿は見つからなくて、
警察や消防にも協力を頼んだ。



警察や消防に助けを求めるんじゃなくて、
俺たちで、瓦礫を取り除いて
晴貴を見つけてやれれば、
アイツは生きていたかもしれない。


だけど……
俺も悠生も翔琉も煌太も
ただ、助けを求めることしか出来なかった。

何もしてくれなかった、
警察や消防に絶望して、
ようやく瓦礫を自分たちで、取り除き始めたのは
2時間くらい助けを求め彷徨った後。


その後も、晴貴の事が気になりながら
俺は美空を探しにその場を離れた。



美空がお母さんと暮らしていたアパートもまた
全てが倒壊していた。





『おばさん、美空』




そう言いながら倒壊した木を
押しのけるように、
ただ名前を呼んで叫び続ける俺に
声をかけてくれたのは、
多分、美空たちをよく知る存在だろう。




『大丈夫。

 美空ちゃんは助かって、
 今病院に搬送されたよ。

 確か、山手総合病院だったかな。
 兄ちゃん、行ってみるといいよ』



そう言われて再び、歩いて山手総合病院へとたどり着いた。

その場所で、美空は俺の名前を呼びながら
元気に笑ってた。


そんな笑顔に安心して、
再び、晴貴の元へと戻った時
瓦礫の下から息を引き取った後の
晴貴が見つかった。




その直後に見つかった、
晴貴の両親は、
救命可能と判断されて、
素早く救急隊に病院へと搬送された。




晴貴を連れて、
近くの遺体安置所へと、メンバーで辿りついた後
俺は再び、美空の元へと顔を出した。



美空が居た場所に、
アイツの姿はない。


俺の視線の先には、
美空の家のおばさんが、
病院のスタッフにお辞儀をしていた。


退院?



元気そうだった美空を思い出して、
そう思った希望は、
すぐに崩れ落ちる。



クラッシュ症候群で急変した
アイツは、俺を再び待つこともなく
天国へと旅立った。



再会の時に見せた、
笑顔だけを残して……。 
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