天使の贈り物
そんな声を聞こえないふりをして
俺はただ、
アルコールを体内へと流し込んでいく。
アルコールを飲み干しながら、
思い返すのは……
あの日の時間のことばかり。
『奏介君ごめんなさい。
おばさん、日本にはもう居られないわ。
美空とアメリカに帰ります』
美空の火葬が終わった後、
突然告げられた言葉。
その日から数日後、
おばさんは美空の遺骨を抱えて、
アメリカへと帰ってしまった。
ふいに電話を切った後の、
成実が再度注文したアルコールを掴み取って
一気に体内へと流し込む。
ピッチが速いだろ。
「成実ちゃん。
ちょっと、ピッチ早すぎるよ」
居酒屋にようやく辿りついたらしい
成実の大学の友人は、
戸惑うように、立ち止まる。
成実を介抱しながら、
その友人を仕方なしに俺が手招きする。
俺の手招きに、
恐る恐る近づいてくる成実の友達。
「あの……」
「あぁ、来たなぁー。
我が親友、彩巴ー。
おせーぞー。
っと言うか、そーすけ
アンタさ、なんでそうなのよ」
成実は、すでに出来上がった後らしく
話す言葉がすでにむちゃくちゃ。
彩巴ちゃんと呼んでいた
彼女への言葉が、
次の瞬間には俺宛のものへと変化を遂げる。
俺の背中をバシバシと叩いて、
ぐてんぐてんに酔っぱらいながらも、
真っ直ぐに捉えて切り込んでくる成実の言葉。
多分……アイツは、
その言葉を伝えたくて、
お酒の力を借りたのかもしれない。
アイツの望みは、
晴貴不在でも、
NAKED BLUEを復活させること。
晴貴の夢を追い続けることだから。
だけど……
それは、今の俺には叶わない。
「成実ちゃん。
何度言われても、
俺の意思は変わらないよ」
そう答えながら、
俺はわざと視線をそらした。
そのまま成実は、
テーブルに突っ伏して
眠りに落ちてしまう。