天使の贈り物 




「おっ、君。
 彼女たち、気になってる?

 アイツらは今、俺の店の一番人気。
 今年、高校を卒業したばかりの子たちだよ。

 strawberryfieldsって言って
 ボーカルとピアノの子が、美空。

 シンセサイザーを担当している子が、
 アリサって言うんだよ」



マスターはそう言って、
ステージの子たちを紹介して、
俺たちを奥のテーブルへと案内した。




ノートパソコンを開いて、
俺たちが持ってきたサンプルを
ヘッドホン越しに聞いてくれるマスター。



マスターが俺たちのサウンドを聴いてくれる間の
緊張感は半端ない。


祈るような気持ちで、
俺も晴貴も、
煌太も翔琉も悠生もただじっと待った。




暫くの沈黙の後、
ヘッドホンに手をかけたマスターは
ヘッドホンを外して、俺たちに向き直った。




「まだ荒削りだけど、
 熱意は伝わったよ。

 出演にはノルマも出てくるけど、
 やってみるかい?」


そう言って切り出された言葉に、
俺たちは、ヨッシャーっと思わずガッツポーズ。



そんな俺たちを見ながら
マスターは、
まるで親父さんのような目で
俺たちを見守ってくれた。




カレンダーを見つめながら、
マスターがボソリと呟く。





「そうだな。
 
 一週間後、今日もやる
 strawberryfieldsが
 演奏するんだ。

 前座で良ければ、演奏してみないか?
 アリサや美空には俺が話をしてみるが……。

 ちなみにチケットはもう完売済みだよ」



そう言ってマスターが告げた
その日が、俺たちのこのライブハウスのデビューとなった。


晴貴が代表で、
マスターとの出演の契約書を交わして
その時、俺たちの前に一つの煉瓦が差し出された。



何も文字の綴られていない煉瓦と一緒に
出された黒のマジック。
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