天使の贈り物
「悠生(ゆうせい)、珈琲。
あんまり、彩巴ちゃんを怯えさせないでよ。
今日は、昨日のお詫びに俺が誘ったんだ」
「昨日の詫び?
なんだよ、それ。
それって、久しぶりの色恋沙汰か?」
そーすけさんが準備してくれた椅子に
腰掛けるものの、
悠生と呼ばれたその人と、
そーすけさんの会話はなかなか終わらない。
メニュー表をチラリと見つめて
何時ものよう、レスカを注文すると
窓から外の景色を眺めた。
この峠をくだった向こうには、
住み慣れたあの町がある。
今も青いビニールシートに屋根が覆われた
映像が、時折TVで流れる。
「ごめんごめん。彩巴ちゃん。
アイツ、悠生って言って俺の
昔からの友達なんだよ。
何してた?」
私の前に、もう一度座りなおした、
そ-すけさんは
覗き込むように私を見つめた。
「いえっ。
峠の向こう側を見てました」
そう答えた私に、
見せたそーすけさんの顔はやっぱり悲しそうで。
「あの……。
そーすけさん?」
フリーズしてしまったように、
反応が鈍くなったそーすけさんが気になって
ゆっくりと覗き込む。
「あっ。ごめん……。
何してるんだろうね。
昨日のお詫びのつもりで
付き合って貰ってるのに、
また今日も同じような状況になってしまってるね」
っと、そーすけさんは
申し訳なさそうに呟いた。
「私……気にしてないですから」
「そう、なら良かった……。
峠の向こう側、
何時になったら行けるのかな?」
テーブルの上に並べられた、
珈琲に手を伸ばしながら、
そーすけさんが小さく呟いた。
そんな言葉を、
レスカを飲みながら
受け止める私。