天使の贈り物 



「もしもし」

「あっ、出てくれた。
 えっと、strawberryfieldsの美空です」


美空がそうやって名乗る前に、
俺の耳は、美空の声に反応してる。



「うん。
 成実ちゃんから聞いたんだ」

「成実から連絡貰いました。
 忙しくて、つい連絡先交換するの忘れちゃってたから。

 今、時間大丈夫?」

「いいよ。
 自宅だし、隣の部屋で晴貴が集中してるから」

「新曲?」

「みたいだね」

「そっかぁー。頑張ってるね」

「お互いじゃない?
 美空ちゃんたちも、この間まだ新曲だしたよね。

 事務所所属の話が来てるとか、
 そんな噂も耳にしたけど?」




音楽の話だとお互い、話題は尽きない。


仲良く親しげに話す
会話の殆どは、音楽のこと。

お互いのバンドやユニットの事。




知りたいと思いながら、
それ以上の先にはなかなか踏み出せない現実。




「明日……」



突然、電話の向こうで沈黙の後、
美空が意を決したように言葉を紡ぐ。


「明日?」

「うん、明日。
 9時に何時ものスタジオ借りてるの。

 良かったら、手伝ってくれない?
 奏介のギターを持ってさ」






デートの誘い?

諦める気持ちと並行して
やっぱり期待する心は俺にもあるわけで。

何処か、期待していた俺は
力なく脱力する。



「奏介?」

「あっ、悪い。
 明日、9時な。
 行くよ」

「良かった……。

 あっ、後……その後も、
 良かったら時間空けといて。

 じゃ、休む準備しなくちゃ。

 おやすみなさい」

「うん、お休み」




何気なく初めての電話を切って、
そのまま隣の晴貴の元へと戻った。
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