天使の贈り物 



成実はバンドを再会させたい。
彩巴は俺の昔を知りたい。



俺の昔を彩巴が知ることによって、
彩巴に俺の説得役を頼むっとまぁ、そんな利害関係が一致して
俺に内緒で行われた出来事は
彩巴を追い詰めることになった。




ただ車内で俺たちのバンドの曲を聞いている途中に
彩巴が叫んで、雨の中車を飛び出した。




煌太から知らされたのは、
そんな連絡だった。




病院の後、その連絡を確認すると
いてもたっても居られなくなって
彩巴を探し回る。




アイツが行きそうなところは、
まだ少ないんだ。


大学と下宿先。
アイツのお気に入りの美容院。


後は……そうだ、
橋の向こう側に喫茶店があったか?


彩巴のテリトリーを思い浮かべながら、
愛車を走らせて、街の中を彷徨い続ける。



雨は弱まることなく、勢いを増していく。





下宿先でもある居酒屋に、
彼女を訪ねて飛び込んでみるものの
無断欠勤で、女将さんたちも心配していた。



彼女のことは俺が探すからと俺自身の連絡先だけ伝えて、
再び飛び出すと愛車で、街の中を走り続ける。




下宿先から30分くらい走らせた
公園の傍の歩道をふらふらと歩いている人影を
反対車線で確認すると、
あわてて車をターンさせて
彼女の方へと急ぐ。


彼女の近くに車を寄せて、
慌てて歩道へと飛び出した時、
彼女は車道と歩道の間に作られた柵に
持たれるように座り込んでいた体を
必死に奮い立たせようとしていた。




「彩巴ちゃん」





彼女は驚いたような顔をして、
そのまま俺の腕の中で意識を失った。


長時間の雨に打たれた体は冷えきっていた。


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