天使の贈り物
「奏介、まだ無理させんなよ。
薬、置いてく。
また何かあれば呼んでよ。
後……、
奏介もサボらずに来いよ」
そんな俺の傍で、
翔琉はそう告げると
俺たちを二人だけ部屋に残して
静かに退室していった。
二人になった空間。
ただ何も言葉が見つからなくて、
俺はただ彩巴に触れ続ける。
「……どうして?……」
ふと、彩巴が小さく告げた。
「煌太から
電話貰ったんだ……」
「理由……知ってるんでしょ。
自業自得だよ。
そーすけさんの知らないところで、
勝手に、そーすけさんの過去を知ろうとした。
そんなことやった私に、
神様が罰を与えたんだよ」
次の瞬間、興奮した彩巴が
勢いよく叫びながら布団から飛び起きる。
「そんなこと思ってないよ。
俺が昔のことを
話さなかっただけだから……。
それより、まだ休んでて」
慌ててふらつく体を支えて、
ゆっくりと、布団に中に連れ戻すと
彩巴を横たえた隣に、
俺自身も体を横たえた。
驚くようなひょぅじょぅを見せた彩巴は、
ゆっくりとまわした腕の中、
すっぽりとおさまった。
「ほらっ、彩巴……
もう少し寝なよ。
彩巴が寂しくないように
抱いててやるから。
朝になって、落ち着いたら
一緒に行こう。
バイト先の、親父さんとおばさん
彩巴のこと心配してた」
その後……ずっと覚悟しようと決めていた
あの言葉をゆっくりと伝えた。
彩巴とならば……
前に進めるかもしれない。
同じ痛みを知る……
彩巴とならば。
「彩巴……。
プレギエーラ、
あの町に二人で行こうか?
一人なら、何時まで経っても
帰れないと思う。
でも……彩巴が居たら、
一緒に帰れる気がするから。
その時に……話すよ。
彩巴が知りたい、
俺の過去を……」
灯りをつけたまま、
彩巴を抱きしめながら眠りにつく俺たち。