天使の贈り物
その後は電車で移動して、
墓地へと向かった。
晴貴の眠る場所。
毎日、晴貴の家族が来てるのか
綺麗に掃除された墓は、
草一つ生えてなかった。
その場所で、アイツに心の中
問いかける。
今の俺を見たら、
アイツは怒り狂うんだろうな。
そう思いながらも、
ただ助けられなかったあの時間を
悔やむ言葉しか思いつかなかった。
そして晴貴の墓を後にして向かったのは、
彩巴の実家があった場所。
晴貴の眠る場所から、そう遠くない
火に飲み込まれてしまった町。
空き地とプレハブだらけのその場所を
彩巴はただ歩き続けて、
崩れるように、その場所で土を掴みながら泣きだした。
泣き続ける彼女を
ただ傍で見守ることしか出来なかった。
「もうすぐプレギエーラ始まるね。
列に並びながら、
少しつまみぐいでもしようか?」
祈りのイルミネーションのアーチが広がる
幻想の町の入口に連なる列に並びながら、
懐かしい豚まんを摘まむ。
街の中に広がるパイプオルガンの音色。
一気に空気が神聖なものへと変わり、
厳かな祈りに包まれていく。
光のアーチが、ゆっくりと点灯し
俺たちはその下を歩いていく。
アーチを通過したメインエリアの一角
ベンチに座って、
イルミネーションを見つめていると
彩巴がゆっくりと口を開いた。
「私……あの場所で育ったの。
もう何もなくなってたけど……。
だけど……あの日、家が潰れて
私とお兄ちゃんは助けられたの。
……お父さんと……お母さんは……
あの場所で生きたまま焼かれたって。
焼け跡で、骨を拾ってくれた近所の人が
探してくれて持って来てくれた。
私とお兄ちゃんを助けてくれた人なの……。
だけど……そんなお兄ちゃんも、
助からなった。
瓦礫の下から救い出されて
助かったって思ってたお兄ちゃんは、
クラッシュ症候群で命を落とした。
透析が受けられなくて……」
クラッシュ症候群。
紡がれたその名前に、
俺自身の心が凍り付く。
美空と同じ……。
アイツと同じかよ……。
「そーすけさん?」
震えだす手は、
今も痙攣をとめてくれない。
「ごめん。
そーすけさん……」
彩巴はそう言いながら、
俺の手を掴み取る。
そして冷たく硬直していく
俺の手を、筋肉を解すように
ゆっくりとマッサージしていった。
どうにかして彼の発作をしずめたくて
手を掴み取る。
冷たくなった指先。