天使の贈り物
「クラッシュ症候群。
美空(みく)もそうだった。
助け出したんだ。
助け出して……病院のベッドで
アイツ、笑ってた。
助けてくれて有難うって。
だけど……逝っちまった……」
アイツを想いながら
天【そら】を見上げる。
そんな俺たちを包み込むように
パイプオルガンの音色は響き渡る。
「美空さんには……
お参りしなくて良かったの?」
ふいに告げられた彩巴の言葉にすら、
今の俺には突き刺さる。
「日本に居ないから……」
アイツは日本にすら居ない。
俺がアイツに逢えるのは、
俺自身の心と、
アイツとの思い出が詰まった
この町の中でしか、
出逢えないのだから。
その後、ライトアップが消えるまで
沈黙のまま時間を過ごして、
俺たちはお互いの傷を抱いたまま、
この町を後にした。
後、どれくらい時間が過ぎたら
俺たちは解放される?
違う……解放を
望んでいるわけじゃない。
ラクになりたいわけじゃない。
ただ……
俺が俺自身を許せるように
そうなりたいだけ……。