天使の贈り物 




俺は財布と携帯だけ手にして、
簡単に着替えを済ませると、
電気のブレーカーを落として、
自宅を後にした。




逃げ出してきた人たちで溢れかえる町。


そんな合間を走り抜けて、
バンドメンバーのヤツや、美空たちとの連絡をとろうと
必死に携帯電話を握りしめる。


減っていく電池。



悠生、翔琉、煌太、成実。

一人また一人と安否を確認できる仲間たち。
そんな仲間たちと、合流して今も安否確認が出来ないでいる
晴貴と美空の元へと急いだ。



車に乗り込んで向かうものの、
建物の倒壊により、街に侵入することは出来ない。


仕方なく海を渡る形で、
一度、向こう側の町へと移動して
船で二人の住む町へとルートを取る。


そして後は、ひたすら歩き続ける。





「晴貴、何処?
 居たら返事して」





晴貴の実家付近。

倒壊した建物の近くで
探すように大声で晴貴を呼ぶ成実。




すぐに情報が得られると思ったものの
晴貴が姿を見せることはない。




今もその近くで、救助を待ち続ける
人たちに「晴貴」のことを聞いてみても、
何一つ情報が得られなかった。



晴貴のお母さんは助けられたらしいこと。

お父さんは、地元の消防団としてすでに
動いていると言うこと。 



中には「晴貴」が自宅に戻っていることすら
知らない人も多かった。


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