天使の贈り物
「なぁ、兄ちゃん。
この下に、ウチの母ちゃんが居るんだ。
助けてやってくれよ」
今も余震が続く中、
縋りつくように救助を頼まれる俺たち。
だけど救助をするには、
道具が足りなさすぎる。
「此処に来るまでに、
南下した向こう側でレスキューを見つけたんだ。
救助して貰えるように頼んでくるから」
そう言うと成実と煌太を残して
俺たちは悠生と共に走り出す。
翔琉は医大生と言う立場から、
多少は知識があるのか、
自分が手伝えそうな役割に徹していた。
悠生と瓦礫の中を走り抜けて、
埃の舞い上がる町の中を
救助してくれる人を探しながら彷徨い続ける。
「すいません」
消防を見つけて声をかけるものの、
『消火活動が優先で出来ません』
『現在、救助活動中ですぐには動けない』
などなど、思い通りに運ばない。
次から次へと救助してくれそうな人を
探しては声をかけるものの、
良い返事は貰えなくて、
自分たちでやろうと、
覚悟を決めて晴貴の自宅へと戻った。
そにには命が助かった動ける町の人たちが、
それぞれに使えそうな道具を手にして、
集まって来ていた。
晴貴の事を仲間に任せて
連絡が取れた美空の元へ、慌てて駆けつける。
「奏介。
心配かけてごめん。
私は大丈夫だから。
晴貴くんが早く見つかるように
祈ってるから」
そうやって病院のベッドに体を起こしながら
笑いかけた。