天使の贈り物
胃潰瘍……。
鳩尾が痛かったのは
潰瘍が出来ていたのか。
「もっと早く踏み込んでやりゃ良かった。
奏介がこんなことになる前に。
お前さ、彩巴ちゃんの事好きなんだろ。
ずっと、うわ言みたいに名前を呼んでた」
「彩巴の名前を?
俺が?」
「あぁ。
美空ちゃんに悪いとか思っただろ。
忘れようと行動するから、歪みが出る。
白か黒じゃない。
グレーが一番、心を守ってやれるんだよ。
奏介が美空ちゃんとの時間を
ゼロに出来るはずがないだろ。
彩巴ちゃんと付き合い始めても、
美空ちゃんは許してくれると思うけどな。
美空ちゃんも、彩巴ちゃんも。
二人とね、奏介が必死に恋して愛する人には
違いないだろう」
二人とも、俺が愛した存在。
それだけは確かな事なのかもしれない。
何をどう歪めようとしても、
ぶれることのない真実。
「ほらっ、もう少し休んでろ。
俺は少し出掛けてくる」
そう言うと点滴の管の中に、
一本、注射を追加してアイツは
病室の外へと出て行った。
眠り薬か何かが入っていたのか、
俺は再び、
引っ張られるような錯覚を感じながら
眠りの中へと落ちて行った。