天使の贈り物 



「翔琉さん、
 そのマッサージ、教えて。

 奏介さんの手が震えだしたら、
 私が掌を揉み解す。

 震えが止まってる間は、
 奏介さん演奏出来るんでしょ。
 
 ギター触ってた、奏介さん
 一瞬だけど、楽しそうだった。

 だったら……私は、
 その時間を取り戻して欲しいもん」




彩巴はそう言うと、俺の向かい側に座って
翔琉に指導されながら、
俺のマッサージを続けた。


再び、指先に力が入るようになって
震えが止まった時、
成実が俺の名を呼んだ。




「奏介っ!!。

 Dreams。

 奏介が、やる気になったんだもん。
 傷とかよりも、旅立ち。

 新しい始まりの日らしい、
 Dreamsがいいよ。

 演奏してよ」




成実の声に、
二人のガキも嬉しそうに笑う。



「ほらっ、煌貴も喜んでる。
 晴貴だって喜んでる。

 彩巴、Dreamsはアンタも知ってるよ。
 練習の時、最初に一緒に歌ったでしょ。

 アルバムの中に入ってない
 音源化されてない曲だけど
 晴貴たち、
 メンバーにとっては本当に想い出の曲だから」




そう言うと、
成実の指示で煌太が再び演奏を始める。


そんな想いに答えたくて、
もう一度、ギターを抱えると
懐かしい宝物を奏でていった。



俺たちの演奏で歌うのは、
成実と、彩巴。
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