天使の贈り物
「チクショー。
やっぱり、無理か……」
最後の最後で
また震えだしてしまった指先。
指先が震えだすたびに、
演奏が中断しても、
メンバーの奴らは誰も俺を責めることはない。
彩巴は、さっきと同じように
震えが止まるまで、
じっくりと掌を解し続けた。
「大丈夫だよ。
硬直したら、また解してあげれば
いいじゃない?
暫く触ってないんだよ。
指が動かないなら、
またゆっくりと動かしていけばいいじゃん。
奏介さんの大切な仲間たちは、
指が動かない、奏介さんを
責めるような人たちなの?」
「……彩巴……」
遠ざけようとしていた
その優しさにもう一度気が付かされた時間。
「はいっ。
奏介、とりあえず……
アイスブラック、これでも飲みながら
彩巴ちゃんと聴いててよ」
悠生から手渡されたコーヒー。
それを飲みながら、
仲間のサウンドに身を沈める。
「はいっ。
じゃ、行くよ。
煌太、悠生、翔琉。
奏介、アンタには
まだ話してなかったんだけど
もう一度ギターを手にした
アンタだからさ。
晴貴の最後のメッセージ。
【dream~陽は沈み、陽は昇る~】
Dreamsのアンサーバージョンって言うのかな。
アイツの書き残したメモが見つかって
四人でアレンジしてきた。
後は奏介。
アンタの返事が聴きたいから」
そう言うと、
聴きなれたフレーズと、
真新しいフレーズが交互に押し寄せる
サウンドが流れ込んで来た。