天使の贈り物 

4.愛しさの陰





目が覚めたのは、
見知らぬ部屋。


見知らぬベッド。



真っ暗な闇が……
私を不安どん底に
追い落としていく。





奪われていく体温。

鼻につく……
焼けついた匂い。




嫌っ。




嫌ぁぁぁぁっ。





フラッシュバックに
叫んだ声を聞きつけて、
慌てて電気をつけて、
誰かが飛び込んできた。




「彩巴っ!!」

「彩巴ちゃん」

「彩巴ちゃん」



交互にかけられる声。



それでも視線は
何を捕えることも出来ず
私の時間は……
あの家族を失った時間へと
一人、逆戻りとなって
旅立ってしまう。




「彩巴?」

「彩巴ちゃん、ごめん。

 大丈夫だから……。
 電気つけたから。

ほらっ、
 明るいから……」



そう言いながら、
何度も何度も
かけられ続けるやわらかい声。



そんな声と同時に、
温かいタオルが肌に触れる。



冷たく硬直した体に
優しく染み渡っていく体温と共に
私の呼吸も正常を取り戻し
頭の芯の痛みを微かに感じながら
ゆっくりと情報整理につとめていく。




成実。
煌太さん……。


後は……
知らない人。




「……成実……」

「ごめん。
 電気……」

「ううん……。
 成実が謝ることじゃないから」



あの日から……
電気を消して眠れなくなったのは
私の問題だから。


成実が謝る必要なんてない。


全ては……
私が弱いから……。



「それより……
 ここは?」

「あぁ、
 奏介たちの溜まり場」


サラリと答えた
成実の言葉に、
私は掛布団を無意識に引っ張り上げた。




……穴があったら入りたい……。




そーすけさんのテリトリーで、
あんなに発狂して叫んじゃったなんて。

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