天使の贈り物 



ふと鳴り響く着信音。


大好きなバンドの着うたに
ちょっぴり元気を貰いながら
電話の方へと駆け寄る。




「はいっ。藤堂です」



改まって出た割には、
かけて来た電話の主は
大学で知り合った友達・成実(なるみ)。



「なんだっ、成実かぁ。
 びっくりしちゃった」

「びっくりしちゃったって、
 何よ、それ。

 彩巴、私ちゃんと電話番号も
 メルアドも渡したわよ」

「うん……。
ちゃんと貰ってる」

「だったら、
 どうしてびっくりするのよ。

 携帯に私の名前が表示されるんだから
 ぴっくりする必要もないでしょ」




うん……そうだねー……。



電話帳に登録してたらね……。




「まさかっ、アンタ
 電話帳にまだ登録してないって言うの?」


ありのままの指摘に、
返す言葉なんて出てこなくて
黙りこくってると、
呆れたようなため息がついて来た。


「はいっ。
 図星なわけね。

 わかりました。

 それより、今日はまだバイト?」

「ううん。
 今日はもう終わったよー」

「そう、そりゃよかった。
だったらちょっと今からアンタも来ない?」


そんな言葉で召喚された私は、
指定された、
居酒屋へと着替えを済ませて向かった。




ぬくもりのいえ。



ひらかなで掲げられた看板を潜ると、
自動ドアが開いて、
店員さんの威勢のいい掛け声が
店内に飛び交っていく。



「いらっしゃいませ。
 おひとり様ですか?」


入口で話しかけてきた店員さんに、
「友達がいるんで」っと
短く断りをえて店内のフロアーに入らせて貰うと、
すでに出来上がり気味の、
成実が大はしゃぎで手を振った。



「成実ちゃん。
 ちょっと、ピッチ早すぎるよ」


そういって、成実を介抱しながら
私に手招きする知らない男性。


「あの……」

「あぁ、来たなぁー。
 我が親友、彩巴ー。
 おせーぞー。

 
っと言うか、そーすけ
 アンタさ、なんでそうなのよ」


すでに酔っぱらってる状態で
でろんでろんの成実は、
そーすけと呼ばれた人の背中を
バシバシと叩きながら
一人何かを呟いてた。
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