天使の贈り物
「何よっ!!
バカ、奏介。
アンタだけが辛いなんて思わないで。
私だって……私だって、
辛いんだから。
奏介が演奏してくれて、
アイツが歌ってた音が聴けたら……
私も晴貴を感じられる。
晴貴が一緒だって思える。
晴貴の声だって、携帯の留守電に入ってた
それしか残ってないんだよ。
だったら、私……
それ以外にどうやって、
晴貴を感じたらいいのよ」
その場で泣き叫んで、
崩れ落ちた成実を、
煌太さんが、優しく抱き留めながら
落ち着かせていく。
「言いたいことはそれだけ?」
ふいに、自分を責める様に
そう紡ぐと、そーすけさんは
ふらふらっと、
椅子から立ち上がった。
「奏介っ」
そーすけさんの、
友達が次々と声をかけるけど
そーすけさんは、応じる様子もなく
そのまま店内から外に出て行った。
追いかける、店内を出る間際……
「彩巴ちゃん。
奏介、頼むな」
っと……悠生さんが、私に告げた。
店内を出て行った、奏介さんは
車に乗り込んだまま、
声を殺して……嗚咽しながら、
ハンドルを何度も何度も、
両手で叩きつけてた。
そんな、そーすけさんがいたたまれなくて
慌てて助手席に乗り込んだ私は、
助手席側から、
そーすけさんに抱き着いた。
自分でもびっくりした咄嗟の行動。
だけど……今のそーすけさんには、
それが必要だと思ったから。
ハンドルを叩きつけてた腕が、
縋るように
私の首の後ろへと回されていく。
その直後……肩すじを
這う吐息を柔らかに感じた直後、
唇が……寂しさを埋めあうように
吸い付いた……。
その日……
キスを交わして、
少し落ち着きを取り戻した後……
再び走り出した車は、
ラブホテルへと吸い込まれて……。
互いの寂しさを埋めるように、
体を重ねた。