天使の贈り物 



「うん、説得するよ。

 私が責任もって。
 だから教えてよ」



重苦しい車内に、
響いた私の言葉。




「成実、感情的になるなよ。
 体に障るから」





成実を気遣う、煌太さんの言葉に
違和感を感じながらも
スルーを決め込んで、
自分の目先のことを優先させた。



「彩巴が
 奏介説得してくれるの?
 
 ホント?」


成実は助手席から小さく言葉を吐き出す。


「うん。

 私……絶対、
 説得してみせるから」



説得できるかどうかなんて
正直、どうでも良くて……
私は、親友の気持ちの中にすら
土足で踏み込んでる。



だけど……
そーすけさんを知りたい気持ちは
止まらないから……。



私の知らない、
そーすけさんを知りたい。



私が知らない、
そーすけさんの苦しみを
包み込んであげたい。



そーすけさんが笑ってくれたら、
私の時間も、
ゆっくりと動き出すような気がするんだ。




「ねぇ、煌太。
 あのCDある?」

「あぁ」


運転する煌太さんと二人、
成実は何かを会話すると
ダッシュボードを開けて、
一枚のCDを取り出す。



その蓋を開くと、
CDをゆっくりとオーディオの中に
挿入させる。




ピアノの音色がゆっくりと響いて、
そこに重なっていく、
ドラム・ベース・ギター。


重厚な音色が、一つにまとまった時
少し哀愁を匂わせる声が、
車内に静かに響き渡った。




「……晴貴……」



助手席で、そう呟いた成実は
泣いているのか、
鼻水をすすりるような音が聞こえた。
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