天使の贈り物 







それでも……いい……。







幻聴でも……

そーすけさんが、
私を呼んでくれたら
私は……それだけで、
歩いていくから……。















目が覚めたら、
見慣れない部屋。





この匂い……。






そーすけさんの匂いがする、
布団の中、ゆっくりと目が覚めた私の額に、
指先の長い冷たい掌が伸ばされる。




ゆっくりと視線を移動させると、
そこには……確か……
翔琉さんと呼ばれてた人が座ってた。





「奏介、起きなよ。
 ほらっ、彩巴ちゃん目が覚めたよ。

 熱も下がったみたいだし、
 もう大丈夫だよ」




翔琉さんがそうやって声をかけた向こう、
ゆっくりと、そーすけさんの顔が近づいてきて
私に髪に優しく触れる指先。

その指先は、髪から額へと移動する。



「奏介、まだ無理させんなよ。
 薬、置いてく。

 また何かあれば呼んでよ。
 後……、
 奏介もサボらずに来いよ」





意味深な言葉を残して、
ゆっくりと部屋を出ていく
翔琉さん。




二人残された、
そーすけさんの部屋。




そーすけさんは、
やっぱり何も言葉を話さないまま
ベッドサイドに座って、
私に優しく触れ続けていた。







「……どうして?……」





そんな優しさが苦しくなって、
逃げるように呟く。




「煌太から
 電話貰ったんだ……」




真っ直ぐに私を捕えて、
そーすけさんはそうやって紡いだ。




煌太さんが……。




「理由……知ってるんでしょ。

 自業自得だよ。

 そーすけさんの知らないところで、
 勝手に、そーすけさんの過去を知ろうとした。

 そんなことやった私に、
 神様が罰を与えたんだよ」




布団から起き上がって、
激しく罵倒するように叫んだ。



体の節々が悲鳴を上げてる。




そーすけさんの物らしい、
大きなパシャマが
余計に……今の自分を滑稽に見せて。

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