天使の贈り物
えっ?
メールじゃなくて着信?
携帯電話をポケットにしまうと、
そっと教室を抜け出して、
電話を繋ぐ。
「もしもし」
「彩巴、
講義中だったよね」
「うん。
今、教室抜け出してきた。
どうかしたの?」
「今から迎えに行くから、
ちょっと学校抜け出してくれない?
成実ちゃんがさ……
病院に運ばれた」
成実が病院に運ばれた?
そう言えば……
車で飛び出したあの日から、
成実とはなんとなく連絡取りづらくて、
一度もとってなかった。
あの日も……
煌太さんが心配するほど
様子がおかしかったのに。
「ねぇ、成実は?
成実は平気なの?」
必死に電話の向こうに伝える私に、
そーすけさんは、
少し笑いながらこう続けた。
「大丈夫。
病気じゃないからさ」
その言葉に……
体の力が抜ける。
病気じゃないのに……
病院?
その言葉に……
私が咄嗟に結び付いたのは一つだけ。
出産?
「そーすけさん……。
もしかして成実……
妊娠してたの?」
そう切り返した私に、
そーすけさんは確かな声で
頷いた。
「もうすぐ学校前につくから」
「わかった。
私も今から抜け出す」
慌てて電話を切って、
教室の中に戻ると、
荷物をまとめて、
教壇に立つ講師のもとへと駆け寄る。