天使の贈り物
耳元で……
お世話になってる人が倒れて、
電話がかかってきたので、
早退させてくださいっと許しを貰って
バタバタと飛び出した。
門の前には、
そーすけさんの車が停車してて
私はその車の中に、
吸い込まれるように
滑り込むと、車は流れるように走り出した。
「そーすけさん。
成実は?
妊娠ってどういうこと?」
「どういうことって……
彩巴、何も聞かされてないの?」
車内、聴きなれた
そーすけさんの車の中の音楽を耳にいれながら
浮かびあがる感情のままに、
言葉を紡いでいく。
「俺もさっき、煌太に聞いたんだ。
煌太が……父親になるってさ。
『親父になる覚悟を決めた』って」
親父になる覚悟って……。
生まれてくる子が、
煌太さんの子なら、
そんな言葉出てこない……よね。
「そーすけさん、それって……。
成実の子は、あの日に亡くなった
晴貴さんの子ってこと?」
「みたいだ。
煌太は、一度も成実と関係を
持ってないからさ。
晴貴と煌太は、
成実を奪い合ってたから」
晴貴さんと、煌太さんは……
成実を奪いあってた?
奪い合ってた、
仲間の最後の贈り物。
その命を守るために、
煌太さんは父親になるってこと?
そんな説明を聞きながら、
成実のことを考えているうちに、
車は病院の駐車場へと停車して、
そーすけさんと二人、
病院内に慌ただしく駆け込んだ。
院内にいる煌太さんと、
そーすけさんが連絡を取って
成実の居場所を知ると、
エントランスの案内図を一瞬のうちに頭にいれた
そーすけさんが私の手を引いて、
エレベータへと駆け込んだ。
LDRと記された部屋の前で
落ち着かなさそうに
立っていた。