天使の贈り物 



「煌太、
 何時まで外に居るんだ?

 お前が、父親になんだろ。

 俺たちにそう言ったよな。

 だったら、成実をしっかり見てろ。

 晴貴とお前の子供、生まれんだから」



そう言って、煌太さんを室内に連れ込むと
翔琉さんは、仕事へと戻っていった。





陣痛の波をやり過ごす、成実の隣
ベッドサイドに腰掛けて、
時折、腰をさすりながら成実を見つめる。



他のメンバーは、
部屋の中で、
それぞれにTVを見たり
好きなことをして過ごして……。





「煌太……。

 あの歌
 ……聴かせて……。

 晴貴の……」





そう紡がれた成実の言葉に、
煌太さんはポケットに入れてある、
ipodを取り出して、
成実の前にさしだす。




静かに流れるドラムから始まるフレーズ。

そこにピアノが重なって、
静かなメロディーが柔らかに広がる中、
ギターの音色が、抱きしめるように広がっていく。
コードが巧みに重なって、
美しい音色を出し始めた頃、
晴貴さんらしい、その声がLDRの中に響いた。




さっきまで、キツそうだった
成実の表情が、晴貴さんに包まれて安心したみたいに
穏やかになって、そんな成実を煌太さんが
手を重ねて寄り添う。




そんな二人の間に、
居座れるわけもなくて
私は慌てて、
そーすけさんの元へと近づく。





……まただ……。





そーすけさんは、
今も……手を震わせながら、
唇を噛みしめて、
辛そうな表情を浮かべてた。






そんな、そーすけさんの傍
震えている手を掴んで、
ゆっくりとその瞳を見つめる。

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