天使の贈り物 






本当に?


本当にそーすけさんだけ?



本当に寂しがってるのは
貴女じゃないの?

彩巴……。







心の中、もう一人の私の声が
木霊していく。



「そろそろ帰ろうか?」

「はいっ……。

 成実、起こさないとですね」



そう言うと、私は成実の体を
ゆさゆさと揺すって、
ゆっくりと覚醒させる。



「何ぃ?あぁー、彩巴じゃんー。
 来るの、遅いぞー」


今も出来やがって、
思考回路が定まってない
成実を、手慣れた感じで
抱え上げて、
出口の方へと向かっていく。


「彩巴ちゃん。
 悪いんだけど、
 ポケットに財布あるから
 払ってもらえるかな」


そーすけさんはそう言うと、
私が取りやすいように、
ポケットの存在を示すように体を捻る。

恐る恐る、そのポケットに潜めた
財布に手を伸ばして、
ゆっくりと開く。


「お会計、7160円です」


店員さんに言われるままに、
お札を出して、小銭を確認しようと
小銭入れを開いた時、
その中に……そーすけさんの持ち物としては
おかしい女性ものの
ペンダントトップが姿を見せた。



チクリと痛む心を押し隠して、
残りの小銭を支払う。




店内を出ると、そのまま
タクシーを一台拾って、
私たちは家路に向かう。



「彩巴ちゃん、良かったら
 連絡先交換してもいいかな?

 それとも、
 成実ちゃん経由の方が安心?」


そーすけさんの問いに、
全否定するように首をブンブンふる私に、
そーすけさんは、
初めてクスクスと笑った。



その後……
お互いの連絡先を交換したら、
その日はタイムリミット。



私が降りる場所に、
タクシーは到着してしまって
そのまま車を後にした。



眠り続ける成実は、
起きる気配もなし。



「すいません。
 そーすけさん
 成実のことお願いします」



そう言ったのを最後に、
タクシーは扉を閉めて
走り出した。

< 6 / 178 >

この作品をシェア

pagetop