天使の贈り物
「その辺が、私たちの居場所だったの。
私たちの手元に残ってる想いでは、
このCDが1枚だけ。
後は、心の中の記憶だけだよ。
だけど、そこに行けば……
知ってる人もいるかも知れない。
彩巴が手に入れたいものの在り処をさ」
そう言うと、成実は再び煌太さんを呼び寄せて
煌貴くんを両手に抱いた。
「私には……晴貴が旅立った後も、
ずっと煌太たちが居てくれた。
だけど……、彩巴に出逢うまで
奏介はずっと一人だったんだよ。
だから……、
今度は離れずに、傍にいてやってよ」
そう言って、にっこりと微笑む成実に
続くように、煌太さんと悠生さんも私を暖かい目で見つめた。
「私……今から、
この場所に行ってくるよ」
一気にレスカを飲み干すと、
立ち上がって、お店の出口へと向かう。
「煌太、近くまで送ってやって。
私も……、
晴貴んちにも行きたいからさ。
晴貴の両親の新しい家、
教えて貰ったからさ。
煌太も父親してくれてるとこ、
ガツンと見せつけに行こうよ。
ごちそうさま、悠生」
そう言うと、成実もテーブルを離れて
店の出入口の扉を開く。
「行ってらっしゃい」
会計を済ませて、悠生さんに見送られて
二度目の住み慣れた場所へと踏み込む。
最寄駅となる場所で下ろして貰って、
そのまま成実と煌太さん、煌貴くんと別れると
ナプキンの地図を手掛かりに
一人、歩き出す。
地図の通りに歩いて
辿りついた場所は、
一度だけ訪れた、あのLIVEハウス。
この場所には……
あの煉瓦があるだけだった……。