天使の贈り物
LIVEハウスの前、
地面に埋められた、
願いの煉瓦。
そーすけさんたちの名前が
うっすらと綴られた
その煉瓦に、
ゆっくりと手を伸ばす。
「君?
ここで何してるの?」
テノールような響きで、
問いかけるのは、
ダンディーな髭が特徴のおじさん。
その人は、ゆっくりと私の方へと
近づいてきて、
先ほどまで触れていた
煉瓦を土埃をのけながら
懐かしそうに辿った。
「NAKED BLUE……。
あの生意気なガキどもか……」
そう言いながら、
その人はどこか懐かしそうで。
「あの……。
そーすけさんたちを……。
NAKED BLUEを知ってるんですか?」
「あぁ、良く知ってるよ。
私はこの店のマスターだったからね」
そう問いかけた私に、
その人は、にっこりと微笑み返した。
「NAKED BLUEは、
あのガキどもは、ここから
羽ばたいていくヤツラだったんだけどな。
惜しい奴らだよ……。
あの地震で晴貴と、
美空さんが亡くならければな。
あぁ、悪い悪い。
少し昔を思い出してしまったよ。
ところでお嬢さんは?」
「晴貴さんの彼女。
成実の親友です。
今は……、
そーすけさんに片思い中かな?
それで……私の知らない時代を知りたくて
お邪魔しました」
「そうか……。
少し、ウチによってくか?
嫌じゃなければだけどな。
あのLIVEハウスを立て替えて、
もう一度、頑張る決心をしたんだ。
あのガキどもみたいに
夢を追い続ける奴らの夢を
一緒に見ていたいからな。
潰す前に、建物の中に入った。
その時、
持ち出したものもいろいろとあるからな」
そう言ったマスターは、
私を仮設住宅の自宅へと招き入れた。