天使の贈り物 



今も傷跡は深く残る町。



ゆっくりと姿を変えて、
その傷を癒し続ける町。




マスターの仮設住宅にも、
作られた小さな仏壇。




「あの……」

「あぁ。
 君もか?」



言葉らしい言葉も出せず、
黙ってマスターを眺めつづけた
私に静かに頷いた。 


「私も……家族を失いました……」

「そうか……」



そのまま……
その仏壇に静かに手を合わせて、
テーブル炬燵につく。



段ボールの中をゴソゴソと触って、
取り出してきた、分厚い茶色の封筒。





そこには……
NAKED BLUEと記された、
封筒と……ロゴが印刷されていた。



「発売されるはずだったCDだよ。
 彼らの意もあって、
 発売は中止になったけどな。

 代わりのボーカルを見つけて
 レコーディングしても、
 それは俺たちの音楽じゃないからってな。

 それ以上は契約も進まないまま、
 夢だけに終わった夢。

 アイツラに渡してやってほしいんだ」




丁寧に作られたアルバム。


盤の中央には、サンプルの文字が。


そしてアルバムには、
晴貴さんの歌入りの曲と……
ボーカルだけが入っていない、
バンド演奏のみのサウンドが
大切に刻み込まれているみたいだった。




そして……もう一つ。


小さなCDと共に一緒に出て来た、
ルーズリーフ。

そこには……記号と、
歌詞と思われる詩が綴られてた。



「これは?」

「あぁ、これは……
 美空が作ってた曲だよ。

 春の奏介の誕生日までに
 完成させるんだって作ってた。

 結局……未完成のままで
 終わったみたいだけどな。


 こいつも、歌が入ってない。

 
 良かったら、
 これも持っていくといいよ。

 あるべき人のところへ。 

 
 私も頑張るから、
 良かったら、また俺のLIVEハウスで
 演奏してくれないか?

 あいつらに伝えてくれ」


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