天使の贈り物
「成実ちゃん、
奏介ばかり責めないでやってよ。
奏介が一番、演奏したいと
俺は感じてる」
翔琉さんの言葉に、
他のメンバーは
互いにアイコンタクトを
交わし合う。
「翔琉、
どういう意味だ?」
悠生さんが紡ぐ。
「今のアイツは
ギターを弾きたくても弾けないんだよ。
せめて……ギターだけでも弾けたら、
アイツも、もう少し心が和らいだと思う。
神経性なんだけどな。
アイツの手、
今……ずっと痙攣起こしてるんだよ。
痙攣した後は、手が硬直する。
思いのままにコードすら、
抑えられないんだよ。
精神的なモノも大きく影響してるんだろう。
昔は神経性で症状がでるとはいえ、
あれだけの演奏が出来てたんだから。
晴貴の死、美空の死。
それが引き金になって、
あいつは、自分の病気を悪化させちまった。
二人の死を……奏介は、
自分の責任だと歪めて受けいれちまったんだろ。
向き合うより、受け入れて自分を戒める方が
楽だからな。
その結果、アイツは一番大切なギターを自ら
封印した。
手が痙攣して演奏できなくなると言う手段で。
拠り所でもあった、ギターすら
自分で自分の戒めとして、手放したんだ。
アイツを支えるものは何もなくなって、
毎晩、酒を煽るようになった。
そんなアイツを少しずつ救っていったのが、
彩巴ちゃんだよ。
彩巴ちゃんと出逢って、
手の痙攣も少しずつ減っていった。
酒の回数もさ。
だけど……プレギエーラの直後から、
彩巴ちゃんとの連絡が途絶えた。
絶えられなかったんだろう。
悲鳴を上げ続ける心を
どうすることも出来なくて
酒飲んで、潰瘍。
吐血して運ばれたんだよ」
そう言うと、
目の前の飲み物を一気に飲み干して
他のメンバーの顔を翔琉さんは見回した。