天使の贈り物
「帰らなきゃ……」
そう言って、
ドアの方に一歩踏み出そうとした私の腕を
そーすけさんはギュッと掴んで、
自分の方に引き寄せた。
離れようとした腕の中に、
またすっぽりとおさまる。
その温もりが……
とても優しくて……。
そのまま携帯に手を伸ばして、
何かを連絡する。
暫くして、
連絡した主が……
翔琉さんだったことに気が付いた。
そーすけさんの腕の中に、
すっぽりと収まった私を見て
白衣の翔琉さんは、
柔らかに微笑みかけた。
「奏介、貸しだから。
彩巴ちゃん、この際だから
とことん言いたいこと言えばいいよ。
彩巴ちゃんがずっと、
話せないでいることも含めて。
今日は、俺も出れるから。
バイトがないなら、悠生の店
一緒に顔出そう」
確信犯なのは見え見えの
先手で出口を塞がぐように
紡がれたその言葉は、
意味深で……、
そーすけさんの視線が鋭くなる。
「ごめん……。
そこの狼、焚き付けたかも」
なんて笑いながら、
翔琉さんは病室を出て行ってしまって、
残された私は、
逃げたしたい気持ちでいっぱいになった。
いやっ……。
翔琉さん……助け舟って言うよりは、
事態を複雑に
しただけのような気がするんだけど。
「あっ……。
あの……私……やっぱり……」
タイミングで立ち上がって、
ズルズルとドアの方に
後ずさりを試みるものの
そーすけさんが
それを許してくれるはずもなく
メデューサに睨まれた私は
黙って、その場所に立ち止まった。
「彩巴、こっち来て」
そーすけさんの指示されたまま、
そーすけさんのベッドに腰掛ける。
後ろからまわされた腕は、
私をすっぽりと包み込む。
耳元で囁くように尋問される
その言葉は……私を疼かせていく。