アイスクリーム ~たくされた想い~
桜の少女
『あれからもう、12年もたつのか。早いな…でも、よかった。この街に戻ってこれて。』
長い黒髪を風になびかせる少女は、桜吹雪の中を歩いていった。




『渡辺くん。』
『ん?』
『ありがとう。』
『…え?何が?』
『…なんでもない。』
『えー⁉︎なんか気になるわー。』
『帰ろ。』
『おう!』
2人はいつしかあのアイスクリーム屋に通うようになっていた。





『…見つけた。遠山 希。』


『…え?』
2人がアイスクリームを食べていると、少女が、話しかけてきた。
自分達と同じくらいの年で、身長も希とあまり変わらないくらい。腰まである長い黒髪が印象的だった。
『…あなたは?』
希がそう聞くと、少女はこう言った。
希のように全く笑顔を見せず。

『あなたの両親を殺した人。とでも言えば分かるかな?』
その瞬間、希は大きく心臓が鳴るのが分かった。
『…園田、ゆい。』
希が慎重に答えると彼女はこう返した。
『正解。』
一瞬で蘇った。
どうして自分の両親が死んだのか。
どうしてこの子が生きているのか。

ーどうして自分が笑えないのか。



ゆいは、あの時あった出来事を飛鳥に聞かせるように、淡々と話し始めた。
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop