アイスクリーム ~たくされた想い~
同じ
ある街に幸せな家族がいました。
家族構成は、父・母・娘。
特別裕福な訳でもない、普通の家族でした。それでも、3人とも幸せを感じていました。

娘が5歳になった頃、3人はあるアイスクリーム屋を訪れました。
そして、そこに3人でよくアイスクリームを食べに行きました。

幸せな今が続くと思っていました。
3人共。

ーでも、その幸せは長くは続きませんでした。


もう一方の家族は、お金があり、裕福だが、家族の仲はあまり良くなく、少女はひとりぼっちでした。そんな時、幸せな家族を見た少女はその家族をうらやましく思いました。単純に憧れていました。


そんな時、事故が起きたのです。
少女もまた、アイスクリーム屋に通っていました。その日も急いでそこに向かっていました。

赤信号だということも気にせず走って向かいました…
そこにトラックが走ってきました。少女は気づいていません。それに気づいた幸せな家族の両親は走ってその子を助けにいきました。そして、2人はトラックにはねられ死亡しました。


ー私が、その2人に助けてもらった少女。だから、私のせいであなたの両親は亡くなった。
『ごめんなさい。』
ゆいは涙を流し、そう言った。
『…そうだったんだ。』
飛鳥が呟く。
『私のせいで…』


『…そうよ。あなたのせいよ。
あなたのせいで私のお母さんとお父さんは死んだ。絶対に許せない。殺したいとも思う。でも…』
そういって、一拍あけてこういった。
『あなたも、笑えない。』

すると、ゆいは驚くこともなく、ゆっくり頷いた。

そこから、希はゆいの話の続きのように話し始めた。

私とその少女は救急車に乗り、2人の無事を祈った。5歳の子供でも、危険を感じた。
そして、その不安は嫌な意味で的中しまう。
『残念ですが…』
医師はそういって2人の前から去った。
『うそ…お母さん。お父さん。』
両親の亡骸を前に私は呟いた。涙が止まらなかった。拭いても拭いても出てくる涙を止められなかった。
それをみたゆいは、何も言えなかった。
怖くて怖くて、何も言えなかった。
そこから2人は全く笑えなくなってしまった。アイスクリームも食べなくなってしまった。

そして2人は今まで笑えずに生きてきた。いや、自分の感情が笑うことに対して、ストップをかけていたのかもしれない。


ー12年の月日を経て今に至る。

3人は何も言わず、しばらく沈黙が続いた。すると、飛鳥が沈黙を破ってこう言った。

『…いいんじゃないかな。笑っても。』
その言葉に2人は驚いた。
そして、飛鳥は続けた。
『12年も辛い思いをしたんだ。もう笑ってもいいんじゃないかな。亡くなった遠山の両親もこのことを望んでないと思うんだ。これは、俺の勝手な推測だけど、
きっと、遠山の両親は自分たちの命を幼い子供に渡したんだ。自分たちよりも未来のあるあの子にこの命をたくそうって。私たちが作りたかった思い出まで、この子供に作ってもらおう、笑ってもらおうって。…俺は、そう思う。』
希とゆいは泣いた。あの日のように涙が枯れるくらい。

でも、あの時とは少し違かった。なぜなら、あの時は、恐怖と不安の涙。今流しているのは、安心に包まれた涙だから。自分たちは笑ってもいいんだって思った。


そして2人は泣き続けた。
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