黒猫拾ったら、吸血鬼でした。おとしものにはご注意を!
途中何度も食べ物の誘惑にさらされながら、やっとの思いで目的地にたどり着く。居酒屋という店からは酒の匂いが強く香ったから、おそらく酒を飲む店なのだろう。

気にはなるが、今はそれどころじゃない。



『は――猫の体で走り回るのさすがにしんどいな。血が足りないし何も食べてないし……これで、無駄足だったら絶対許さないからなっ』



朱い鳥居――ではなく、白い鳥居をくぐり長い石段を駆け上がる。



『どうして俺が、こんな肉体労働をしなきゃいけないんだ……』



ブツブツ文句を言いながらも足は止まらない。



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