春に想われ 秋を愛した夏
ランチが豪勢だった分、お昼からの仕事では溜息をつく暇もないほど忙しく働いた。
急ぎでもない仕事まで引っ張り出して、どんどん片付けていく。
「あんまり飛ばすと、ガス欠になるぞ」
新井君からの忠告には、平気だよ。と笑って返した。
秋斗のことを考える暇もないくらい忙しくするんだ。
「定時にしっかり上がらせてもらうんでー」
語尾を延ばして大丈夫とおどけると、ガソリンはビールか? なんて笑われ大きく頷いた。
体調を崩してから、塔子といつもの居酒屋で飲むのも控えていたけれど、そろそろ解禁してもいい頃だろう。
連絡もせずに居酒屋へ顔を出したら、塔子、びっくりするかな?
驚いた塔子の顔を想像して、今からワクワクとしてくる。
叶わない過去の恋に胸を痛めるよりも、ビールの炭酸に顔を顰めている方がずっと健全だよね。
しばらくカタカタとキーボードをリズミカルに早打ちしていると、隣の新井君からはゲームなら即効でボスを倒せそうだとからかわれてしまった。
今度対戦でもする? なんて言うと負け戦はしないと断られてしまう。
私って、どれだけ凄いの?
思わず笑ってしまう。