春に想われ 秋を愛した夏
ソファに腰掛けて熱々のコーヒーを飲んでいると、あーあ。なんて春斗が天井に漏らした。
「どうしたの?」
私が顔を覗き込むと。
こうやって、このままずっとそばにいたい。なんて、甘えた顔を向けてくる。
こんな時の春斗は、本当に子供みたいで、なんだか可愛らしく感じてしまう。
こういうのを、甘え上手というのかもしれない。
「帰りたくないな」
私の持つカップを手に取りテーブルへ置くと、さっきみたいに抱きしめてくる。
「春斗、子供みたいだよ」
抱きしめられたままクスクス笑うと、子供でも何でもいいよ。なんて耳元で囁く声がくすぐったかった。
そのまま耳たぶを甘噛みされて、小さく吐息が漏れる。
「香夏子と、ずっとこうしていたい」
甘える春斗に、ちょっと意地悪だけれど現実的なことを呟いてみた。
「明日もお仕事でしょ」
塾の講師は、土日も関係ない。
「僕も、土日休みの仕事にすればよかった」
休みが巧くかち合わないというのは、逢える時間が限られてしまうから、春斗の言いたいことも解る。
それに、会社員とは違って、仕事は毎日夜遅くまであるから、家に帰ってくるのはいつも深夜らしい。
「明日も仕事だけど、午後からだから――――」
そういうとまた唇を重ね、今度はそのままソファへと押し倒された。
結局、インスタントのコーヒーはほとんど飲まれることはなく。
春斗に抱かれて、朝を迎えた。