春に想われ 秋を愛した夏


レースのカーテン越しに入り込んできた、朝の光に目を覚ます。
狭いベッドの隣では、春斗が規則正しい寝息を立てていた。

起こさないように、そっと動いて春斗の寝顔を覗き込んでみる。

こんなに間近で、じっくりと顔を眺めるなんて初めてだな。
あ、綺麗な二重瞼。
睫も私より長い気がする。
ビューラーで上げたら、もっとパッチリになるかも。

想像して、クスリと笑ってしまった。

春斗に寄り添いながら、肌と肌の触れ合うぬくもりが心地よくて、このままずっとこうしていたいな。なんて昨日の春斗のように思ってしまう。

そうだ。
朝ごはんでも作くろうかな。

始まったばかりの恋愛は、乙女な心を思い出させてくれる。
普段やりなれないことを思いつき、そっとベッドを抜け出そうとしたら手首を掴まれ驚いた。

「起きてたの?!」
「今、起きた」

寝ぼけた声とは裏腹に、私を掴む手はしっかりと力強く、胸元へと引き寄せる。

「朝ごはん、作ろうかと思ったんだけど」
「要らない。香夏子とずっとこうしてるほうがいい」

言われて、トクトクと心音が高鳴っていく。

春斗が私を見つめる。
一つ一つ確認するように、キスがおりてくる。
おでこ、瞼、鼻先、唇と愛しそうな瞳で見つめられれば、恍惚となってしまう。
触れる柔らかなぬくもりがとてもくすぐったくて、幸せだった。

「私じゃお腹はいっぱいにはならないよ」

キスに応えながらおどけると、胸はいっぱいにはなる。なんておでこをくっつけ笑う。
それから、またぎゅっと抱き寄せられた。

「香夏子、いい匂い」

クンクンと、子犬のように耳元を嗅がれてすごく恥ずかしい。

「シャンプーかな」

顔を埋めていた春斗の手が体のラインをなぞり始め、結局出かけるまでずっとベッドの中だった。



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