春に想われ 秋を愛した夏
十月初めの暴挙




 ―――― 十月初めの暴挙 ――――



なんとなく秋らしくなってきたな、と空に広がるうろこ雲を見上げる。

「今日も秋晴れだね」

清々しい空を見上げて呟き、ミサと一緒にランチで外へと繰り出していた。

「最近、いい天気続きだよねぇ」

ミサも空を見上げて、太陽の眩しさに手をかざしている。

「社食の安さも魅力だけど、たまには違うものも味わいたいよねぇ」

天気の話をするように、ミサが空を見たまま呟いた。

今日は、少し前に会社近くにできたイタリアンのお店がお目当て。
混んでいなきゃいいな。と財布片手に目指したら、やっぱり混んでいた。

「どうする? 待つ?」

ミサに訊ねながら、並んでいる列の長さに私はちょっとうんざり顔になる。

並んでまで食べたいとは、思わないんだよねぇ。
基本、並ぶのは好きじゃないし。

そして、ミサも同じような考えらしい。

「私、並ぶのイヤ。ここは、もうしばらくしてからにしよ」

一ヶ月後ぐらいには客足も今よりは減るだろう、とミサがそうそうに見切りをつけて踵を返す。


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