春に想われ 秋を愛した夏
「ねぇ。二人とは、相変わらず連絡は取ってないの?」
塔子が言う二人というのは、秋斗と春斗のことだ。
塔子は、時折二人のことをこんな風に訊ねることがあった。
あの頃の楽しさが忘れられないんだ。と懐かしむ顔で言っていたことがある。
仕事をするようになれば、学生の頃みたいに遊ぶことだけに一生懸命になるのは難しい。
たくさんの仕事に追われて溜息をつき、残業だって強いられ、果ては休日出勤まで。
遊ぶなんて、二の次三の次。
だからだろう。
余計に、無邪気に楽しんでいたあの頃の自分たちに戻れるような気がして懐かしんでしまうのは。
塔子の質問に、私は首を振る。
「塔子は?」
「私は、元々香夏子の付属品みたいなもんで、あの二人と個人的に仲が良かったわけでもないから」
個人的に、か。
確かに、塔子が直接あの二人と関っていた。とは言いがたい。
私の都合がつかないときは、塔子とあの二人。という集まりはなかったようだし。
私が居るからバランスが取れていた。と言っていたこともあった。
「連絡は、……取ってないよ」
「その間は何?」
少しだけ躊躇った言葉と言葉の合間を、塔子は聞き逃さずに質問を投げかけてくる。
私は、少しだけ躊躇ったあとに口を開いた。