春に想われ 秋を愛した夏
「また、逢いに来る」
自宅マンション前でそう告げると、秋斗は踵を返していってしまった。
何がどうなった、とかいう事は何一つない。
ただ、三年前と同じことが繰り返されたというだけのこと。
生きる気力を奪われてしまったように、自宅に戻った私はふらふらとベッドへ倒れ込んだ。
何をどう考えればいいのか、少しも解らない。
ただ、苦しくて。
涙が溢れ出すのを、止められなかった。
「助けて……」
誰に縋ればいいのかも判らず、私はその言葉を繰り返す。
その夜。
仕事終わりに来るといっていた春斗は、どうしても急ぎの仕事ができてしまい来られないとメールで連絡をしてきた。
まるで今日のできごとを知っているかのようで、私は僅かな恐怖を感じていた。
春斗にこんなことが知られてしまえば、もう一緒になど居られない。
誰に縋ることもできない苦しい夜に、何をどう考えればいいのか、もう何も解らなくなっていた――――。