春に想われ 秋を愛した夏
口火を切ったのは、私。
「からかってるんなら、もうやめて」
静かな声で告げるとすぐに、からかってない。と言い切った。
「じゃあ、なに?」
どうして逢いに来たりなんかするの?
どうして、キスなんてしたの?
その答が欲しい。
「香夏子が好きだから、逢いに来た」
余りにもあっけなかった。
ストレートに言われすぎて、逆に怯んでしまうくらいだ。
「……なに、言って……」
あの時から、ずっと欲しかった答えのはずだったのに。
その答をずっと求めていたはずだったのに。
他の女の子たちじゃなくて、私を見て欲しかったし、私だけに笑いかけて欲しかった。
秋斗に振り向いて欲しくて、秋斗にそばにいて欲しくて、ずっとずっと……。
だけど、どうしてそれが今なの?
どうしてそう簡単に口にしてしまえるの?
今更そんなこと言われても、そんな言葉を信じることなんかできないよ。
それに……。
春斗の顔が脳裏を過ぎる。
穏やかで優しくて、いつも私のことを考えてくれる春斗。
今の私には、春斗がいる……。
だからこれ以上、何も言わないで。